生物学に特化した工夫を凝らした展示
大阪の高槻市に位置するJT生命誌研究館は「生命誌」(Biohistory)をテーマに、生物学に特化した、様々な工夫を凝らした展示が魅力の博物館です。展示の各テーマ毎に、わかりやすくストーリー性を持たせてみたり、巨大な立体拡大模型を使用したり、映像やタッチパネルを駆使した体験型の展示を試みたりと、見せ方に多様な工夫がなされているのが特徴。
2012年12月現在、以下のようなテーマの展示がなされています。
- 生命誌の階段
- 蟲愛づる姫君
- 骨と形 -骨ってこんなに変わるもの?
- 生命誌の役者・「ナナフシ」「肺魚」
- ゲノムが語る生命誌
- 生命誌のお散歩
- あなたの中のDNA
- 共生と共進化 -時間と空間の中での生きもののつながり-
- 細胞展
- ものみなひとつの卵から
- 自然の中で時間を紡ぐ生きものたち
- 生きもの上陸大作戦
- エルマー・バイオヒストリーの冒険-鳥になったリュウ
- Ω食草園
様々な脊椎動物の胚からの骨格の形成がわかる『骨と形』の展示
『骨と形 -骨ってこんなに変わるもの?』の展示では、胚の発生からの経過時間ごとに、スナヤツメ、ゼブラフィッシュ、アフリカツメガエル、アカウミガメ、ニワトリ、ラットの透明骨格標本(軟骨を青、硬骨を赤に染色して軟組織を透明化した標本)が展示されています。無顎類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、と各脊椎動物の骨格の形成がどのように成されていくのかが非常にわかりやすい展示です。
また、成体の通常の骨格標本もいくつか。
こちらはカワヤツメ(模型)、ホシザメ、コイ、ウシガエル、クサガメ、ニホンザル、ニワトリ、とやはり各脊椎動物を網羅。
ハイギョとナナフシの生体展示も
左がオーストラリアハイギョ・ネオケラトドゥス。右が南米のハイギョ・レピドシレン。
ハイギョはシーラカンスと共に肉鰭類というグループに属し、陸上に上がった四足動物に最も近い魚類といて有名ですね。シーラカンスとハイギョのどちらが、より四足動物に近いのかは諸説あるようですが、このJT生命誌研究館でのDNA分析による分子系統樹によると、肉鰭類と四足動物がまず分岐し、その後肉鰭類の中からハイギョとシーラカンスに分岐したという結果が出たそうです。ハイギョとシーラカンスはちょうど同じだけ四足動物に近い、ということですか。
こちらはナナフシの展示。生体がケースの中に大量に入っています。
ナナフシは幼虫の間なら、脚や触覚がちぎれても再生できるそうで、右の写真はそうして触覚や足が再生された痕跡のある個体の標本。再生した部位は、本来よりも少々小さくなるそうで、確かに一目で長さの違いが分かります。
再生の仕組みも、ナナフシが擬態に特化した生き方をしていく上で獲得した機能なんでしょうかねー。面白い。
生物の海からの上陸をテーマに丁寧でわかりやすい進化史の解説も
『生きもの上陸大作戦』の展示では、生物の海からの上陸をテーマに、生物の進化史を丁寧に解説されています。タッチパネルなんかも利用して、親しみやすい見せ方をしているなーという印象。
(特に公立の)博物館のキャプションって、詳細な解説になればなるほど、一度展示された後、新しい情報に更新されることがなく長年そのまま放置されることが多い印象がありますが、ここの解説は情報が凄く新しいなと思いました。
他にも見せ方が工夫された体験型の展示がいろいろ
『細胞展』と題された展示では、巨大な細胞の模型が展示されていました。細胞がどのような構造になっているのか、一目でわかって良い感じ。
こちらは様々な脊椎動物の脳の拡大模型。大脳や中脳や小脳などを色分けされていてこちらも非常にわかりやすい。
全体的に、生物学のとっつきにくい部分をできる限り親しみやすくわかりやすく伝えようという工夫と、専門的なこともできる限りしっかり伝えようという詳細な解説文がとても印象的な展示でした。
アクセス
JR高槻駅から徒歩10分程度。
JR高槻駅へはJR大阪駅から20分弱。JR京都駅からも20分弱。
その他
館内の写真撮影は事前に受付で要確認。webへの掲載等は別途届け出が必要。
館内にコインロッカーなし。
館内に飲食施設等はなし。高槻駅近辺には沢山ある。
入場無料。
公式情報
- 公式サイト
- http://www.brh.co.jp/
- 住所
- 〒569-1125
大阪府高槻市紫町1-1 - TEL
- 072-681-9750