- 2012年12月の記事:古生代・中生代の古生物展示が充実。豊橋市自然史博物館
- 2016年11月の記事:新生代展示がリニューアルされて豊橋市自然史博物館の充実ぶりがさらにパワーアップしていた。
古生物の展示が非常に充実した自然史博物館
愛知県の豊橋市にある『のんほいパーク』(豊橋総合動植物公園)内にある、豊橋市自然史博物館は、古生物系の展示が非常に充実しているかなり大規模な博物館です。特に、古生代・中生代の展示はボリュームたっぷりで、情報も比較的新しく詳細に多岐に渡り、見応え充分です。
展示内容は以下のような感じ。
- 古生代展示室
- 中生代展示室
- エドモントサウルス展示室
- 新生代展示室
- 郷土の自然展示室
情報量が凄まじい古生代展示室
古生代展示室では、地球誕生からペルム紀末までの生命の歴史を、凄まじい情報量で見せるアツい展示がされています(一部、中生代三畳紀の古生物の標本も混ざってますが)
地球誕生から、ストロマトライトの海、ベンド生物群・エディアカラ生物・バージェス生物群と続く展示。
その先には、上の写真のように各生物分類毎に、豊富な標本と共に分岐分類なども詳しく解説。
絶滅両生類展示がアツい
特に個人的にアツいなと思うのは、両生類の展示。絶滅両生類について、がっつり解説してくれる展示って他の博物館ではあんまりないんですよね。両生類から爬虫類や哺乳類への分岐とか、色々学説が変わったりしていてはっきりしないところが多いからなのかもしれないですが......。
ともあれ、あまり他所では見られない、絶滅両生類の標本が多数展示されているので、ここは見どころです。
左から、シームリアの全身骨格、ハドロッコサウルスの頭骨、ディスコサウリスカスとレトヴェルペトンの化石。他にも石炭紀~三畳紀あたりの両生類標本が多数展示されています。
いわゆる「哺乳類型爬虫類」の展示も充実
ペルム紀~三畳紀あたりの我々哺乳類の祖先グループである、いわゆる「哺乳類型爬虫類」の展示もなかなか充実しています。最近では、哺乳類は爬虫類から分岐したのではなく、両生類から爬虫類と哺乳類に直接分岐した(すごくざっくりとした解釈)という説が主流のようなので、「哺乳類型爬虫類」という呼称はあまり適切ではないようですが。逆に「爬虫類型哺乳類」という呼称の方が相応しいんじゃないかというような話もあるようですね。確かに「爬虫類のような生態の哺乳類(の祖先)」というのは意味としてわかりやすい気がします。
ペルム紀の単弓類(いわゆる「哺乳類型爬虫類」や我々哺乳類を含むグループ)の中では最もメジャーであろう、ディメトロドンの展示。全身骨格と、生態復元模型が並んで展示されています。このディメトロドンに限らず、生態復元模型の展示が結構多いのがこの古生代展示室全体としての特徴ですね。
また、足元にはディメトロドンの足跡化石とされるディメトロプス(足跡化石はそれ単体で種として命名されるらしいです。本体との紐付けを確実にすることが難しいからでしょうか)も展示されています。
左から、ペルム紀のスクトサウルス、三畳紀のリストロサウルス、ペルム紀のニクチフルレタス。ニクチフルレタスだけは単弓類ではなく無弓類という現生の爬虫類や哺乳類とはちょっと外れたグループに属する生物ですが、スペースの都合かここに一緒に展示されていました。「無弓類は現生のカメの祖先グループである」という説がちょっと前まで主流だったみたいですが、最近ではカメは他の爬虫類と同じく双弓類というグループに属するというのが主流のようです。
ともあれ、ここには他にも頭骨を中心に「哺乳類型爬虫類」の標本が多数展示されていて嬉しいです。恐竜を含む爬虫類グループと比べて、歯のバリエーションが豊富なので見比べてみると面白いと思います。
恐竜の全身骨格や化石が沢山の中生代展示室
中生代展示室は、当然ながら恐竜の展示が中心。メジャーどころの恐竜の全身骨格標本をしっかり抑えて展示されている印象です。
お馴染みアロサウルスと、竜脚類ユアンモウサウルス。
アロサウルスってシャープでかっこいいイメージなんですが、なんかここのアロサウルスは、なんか全体的に丸いというかふわっとした印象なんですよね。なんでだろう。姿勢のせいなのかな......?
また、大きな竜脚類(いわゆる首と尾の長いタイプの恐竜)の展示は博物館での展示の定番ではあるものの、ユアンモウサウルスというマイナーなチョイスは他では観られないと思います。2006年に新属新種として命名されたばかりの恐竜です。
こちらは定番中の定番、ティラノサウルスとトリケラトプス。
ホールで下から見上げることも、階段を登って上から見下ろすこともできる展示。
羽毛恐竜の化石もいろいろと展示されています。
特に、個人的に好きな恐竜のツートップを張るシノサウロプテリクス(左)とミクロラプトル(右)の化石が両方展示されているのが非常にポイント高いです。この二体が両方ともに常設展示されている博物館は、今まで行った中では多分この豊橋市自然史博物館だけだと思います。
海棲爬虫類の全身骨格もずらり
首長竜やモササウルス類、カメなどの海棲爬虫類の全身骨格も色々と展示されています。
どちらも首長竜のタラソメドン(左)とドリコリンコプス(右)。タラソメドンの方はわかりやすく首の長い首長竜で、ドリコリンコプスは比較的頭が大きくて首が短い首長竜。
海棲爬虫類の中では個人的に一番好きなモササウルス類からはプラテカルパス。やっぱりかっこいい。
上の首長竜の全身骨格もそうですが、天井に吊るされているのはよくある展示方法だけど、階段を登って同じ高さからも近くで観られるように展示されているのが非常に嬉しい。
こちらは絶滅カメ類のタクソケリス。これも同様に真下からと正面からの両方が観られるように展示が工夫されていて嬉しいです。
そもそも、絶滅カメ類の全身骨格復元標本というのが非常にレアなので、見どころのひとつではないかと思います。
実物化石による全身復元骨格が展示されたエドモントサウルス展示室
豊橋市自然史博物館の目玉展示であり、文字通り博物館の中心に位置するのがエドモントサウルス展示室。
小さなホール状になったこの展示室だけやたらと静謐な雰囲気が漂っているのが非常に印象的です。
こちらが目玉展示である、90%実物化石で組まれたエドモントサウルスの全身骨格標本。凄く綺麗に残っていた化石なんだなー、と惚れ惚れします。
こちらはエドモントサウルスのミイラ化石のレプリカ。前肢や背中の皮膚の様子が見て取れる貴重な標本です。
強膜輪(眼球の周りの骨)も残ってるみたいですね。エドモントサウルスの目は体に比べてかなり小さかったんだなーというのが想像できます。
新生代展示室も楽しいよ
古生代展示室と中生代展示室(エドモントサウルス展示室含む)は近年展示がリニューアルされたそうで、それと比較するとちょっと展示が古い感じではありますが、新生代展示室も絶滅哺乳類の全身骨格などをはじめ、楽しい展示がいろいろあります。
特に興味深いのが、絶滅ウマ類の前肢と後肢の骨を、原始的なウマであるヒラコテリウム(エオヒップス)から現生ウマ(エクウス)まで順番に並べた展示。指の数がどんどん減っていって最終的に前肢も後肢も一本指になる過程がわかりやすく展示されています。
他にも紹介したい標本はいっぱいありますが、とりあえず今回はこの辺で。
あと、見どころとしては、古生代展示室・中生代展示室・エドモントサウルス展示室には、随所に古生物復元画家・小田隆さんによるかっこいい復元画が使われていて、ある意味「小田隆美術館」としても楽しめるレベルの量です。こちらも注意して観るとより楽しめるかと思います。
- 2012年12月の記事:古生代・中生代の古生物展示が充実。豊橋市自然史博物館
- 2016年11月の記事:新生代展示がリニューアルされて豊橋市自然史博物館の充実ぶりがさらにパワーアップしていた。
公式情報
- 公式サイト
- http://www.toyohaku.gr.jp/sizensi/
- 住所
- 〒441-3147
愛知県豊橋市大岩町字大穴1-238 - TEL
- 0532-41-4747
アクセス
JR二川駅下車、徒歩10分弱でのんほいパーク(豊橋総合動植物公園)に到着。のんほいパーク内を徒歩5分強。
二川駅へは、JR名古屋駅から東海道本線浜松方面へ1時間強。
その他
コインロッカーあり。
館内には飲食施設なし。のんほいパーク内にはレストランがある。
博物館自体は入場無料なので何度でも再入場可。のんほいパーク自体への再入場の可否は未確認。