タネの「旅」をテーマにした特別展
福井市自然史博物館で開催中の特別展『旅をするタネ』を見てきました。
育ってしまうと移動ができないため、植物の一生のうちで、生息域を広げるほぼ唯一のタイミングである、タネの散布について、その多様な手段を紹介した展示でした。
身近なタネから海外の珍しいタネまで、色んな大きさや形のタネが展示されていて、あんまり植物に詳しくなくても見ていて楽しい展示でした。
世界で一番大きなタネ
会場に入って最初に目につくのは「世界で一番大きなタネ」と題された展示ケース。
30cm以上の大きさのフタゴヤシのタネ。でかい。
さらに、「世界一長いまつぼっくり」サトウマツ(左)、「マメ科植物最大のさや」モダマ(中央)、「世界一大きな翼を持つタネ」アルソミトラ(右)なども。
身近などんぐりやまつぼっくりもたくさん
いろんなどんぐりの展示。普段あまり気にしてないけど、どんぐりも樹種によって大きさも形も全然違うなーと改めて実感。
まつぼっくりもいろいろ。
「どうやってなつぼっくりを容器に入れたのか考えてみよう」という展示も。
ネタバレすると、水分を含むとまつぼつくりは閉じて小さくなるので瓶の口に入るんですねー。乾くとまた元に戻る。
まつぼっくりを分解してみた、という展示も。
風に運ばれるタネ
さて、いよいよタネの多様な散布方法を紹介した展示に突入。まずは、風に飛ばされて運ばれるタネ。
綿毛を飛ばすタイプとか、翼みたいな形をして滑空するタイプとか、同じ風散布でも多様な形態のタネがあって楽しい。
山火事散布のタネ
山火事に依存してタネを散布するタネもあります。日本にいると山火事なんてレアイベントに依存してどうすんだって思っちゃいますが、乾燥した地域では数年程度のスパンで山火事が起きて、植生が一部リセットされて更新される、というのが普通だったりすることもあるようです。
モントレーマツ。前述のとおりまつぼっくりは乾燥すると開くわけですが、山火事の熱で極端に乾燥したタイミングで大きく開いてまつぼっくりの中の種子を全部散布するそうです。山火事後なら周辺のライバルが燃えた後なので、競争が少ないというわけですね。
同様に山火事の熱で果実がパッカーンと開いて中の種子が飛び出す、クリケットボール・ハケア。
動物に運ばれるタネ
植物は移動できないので、移動できる動物に依存して移動するというタイプのタネはかなり多いようです。
被食散布されるタネたち。鳥や哺乳類が果実を食べ、どこかに移動し、消化されなかった堅い種子の部分が排泄されることにより、タネは移動できる上、成長するための肥料(動物のフン)まで用意された環境で育つことができるわけですね。
鮮やかなブルーが美しいタビビトノキのタネも被食散布。
アリに散布を依存しているカタクリやカンアオイのタネ。種子に、生育とは無関係に栄養があって美味しい「エライオソーム」と呼ばれる付着物をくっつけています。アリはタネを見つけると巣に運び、このエライオソームだけを食べて、残ったタネ本体はゴミとして巣の外に捨てるので、結果的にタネは移動できるという寸法。しかも、アリは決まった場所にゴミを集める習性があるので、ゴミとして捨てられたタネは周囲に虫の死骸など肥料となる物が沢山集まった環境で生育できるわけですね。
こちらはクルミなどの貯食散布されるタネ。リスやネズミ、鳥などの小動物がクルミを自分の隠し場所に貯めこむものの、全てを食べきるわけではないので、残ったものが生育できる、という形。
全部食べきられると当然生育できないので、毎年クルミができる数は上下するようになっているようです。クルミの生産量が少ない年は、結果的に動物たちは食べ物が少なくて数が減り、その次の年にクルミが大量に生産されると、動物は数が減ってるので食べきれず、余ったクルミが生育できる、というような仕組み。面白いなー。
こちらは付着散布のタネ。いわゆる「ひっつき虫」とか「くっつき虫」とか言われるアレ系ですね。動物の体に付着することで移動します。
中にはこんな禍々しい形をしたものも。サイズもめっちゃでかい。左はライオンゴロシとかいう恐ろしい名前。右はツノゴマ。別名悪魔の爪とかいうらしい。どっちも中二病感溢れる良い名前だと思います。
水に運ばれるタネ
これらは水に運ばれることによって移動する水散布のタネ。
自力で飛ばすタネ
湿ると縮み、乾くと伸びる性質などを利用して、自力でタネを飛ばす植物たちも。
植物の多様な種子散布の戦略が学べて非常に楽しい特別展でした。
公式情報
- 公式サイト
- http://www.nature.museum.city.fukui.fukui.jp/tokuten/tokuten.html
- 住所
- 〒918-8006
福井市足羽上町147 - TEL
- 0776-35-2844
アクセス
福井駅からは徒歩30分程度。山の中を歩いて登るのは疲れるけど楽しい。
その他の交通手段は公式サイトの案内を参照。
その他
館内に飲食店などはなし。周辺にもあまり飲食店などはなかった印象。
再入場可。