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妖怪のルーツを化石から探る『妖怪古生物展』は民俗学と古生物学の融合が面白い!

2016.08.12 04:28
カテゴリ:特別展・企画展・イベントレポート

大阪大学総合学術博物館で2016年7月23日~8月27日に渡って開催中の特集展覧会。

古典や伝承に伝わる「妖怪」のルーツを古生物の化石から探る、民俗学と古生物学の融合的なユニークな企画。

妖怪のルーツを化石から探る『妖怪古生物展』は民俗学と古生物学の融合が面白い!
 

妖怪の正体は古生物?

大阪大学総合学術博物館で開催中の『妖怪古生物展』を見てきました。

「妖怪の正体は、古生物学の知識のなかった昔の人が、既に絶滅して存在しない生き物の化石を見つけて想像した存在なのでは?」という仮定のもとに、民俗学と古生物学を融合させて様々な仮説を提唱する、面白い企画。まさにフィクション(妖怪)をサイエンス(古生物学)するという意味で良いSF感。めちゃくちゃ面白かったです。

残念ながら展示の写真撮影は不可だったので、テキストだけでざっくりと内容をご紹介します。

龍のルーツはワニとシカ?

阪大博物館といえばマチカネワニ。ということで、最初はマチカネワニの化石の展示と共に、龍のルーツについての考察のコーナー。

ワニの頭骨とシカの角が同時に産出したら「これが龍か!!」ってなるよね、という話。実際、同じ場所からワニとシカの化石が出る地域は結構あるようです。

会場には、マニカネワニの骨格をベースに、絶滅種のシカの角をつけた「マチカネワニリュウ」の全身骨格を3Dプリンタで再現した展示もあります。面白い。

また、ゾウの頭骨も向きを変えて見ると、大きな牙が龍の角に見えて、竜の頭っぽく見えるよね、という話も。実際、ゾウ(ステゴドン)の頭骨をベースに描かれた「竜骨図」というのも残っているとか。(リンク先はPDF)

鬼の角と哺乳類の角の多様性

続いて、角を持つ哺乳類の標本が、現生・化石種問わず大量に展示されているコーナー。

この標本展示だけでも角の多様さが、見ていてとても楽しいんですが、鬼が描かれた浮世絵なども沢山展示されていて、色んな哺乳類の角と、色んな絵に描かれた鬼の角を比較して見ることができるのが非常に面白い。

現在の日本にはいない、水牛やバイソンの仲間の特徴的な湾曲した角も、瀬戸内海周辺で化石として結構産出してるそうで、当時こんな見たこともない角を見つけたら「これが牛鬼の角!!」ってなるかもね、という話などもあってわくわくしました。実際、牛鬼の伝承は瀬戸内海近辺で多いんだとか。

また、化石標本とともにウシ科の進化を追えるようになっていて、がっつりと「古生物学」的な展示でもありました。

ゾウの頭骨は一つ目巨人

「ゾウの頭骨はサイクロプス(一つ目巨人)の頭骨だと思われていた」というそこそこ有名な話がありますが、もちろんこのネタにも触れられていました。

※参考までに、京都大学総合博物館に展示されているナウマンゾウとアジアゾウの頭骨。真ん中の大きな穴は眼窩ではなく鼻孔。

こちらは展示されていた「目ひとつぼう」という妖怪の絵(佐脇嵩之 1737年)。※画像はwikimediaより。

頭の輪郭や目の位置が、もはやゾウの頭骨を元にして描いたとしか思えなくなるほどゾウっぽくて凄く面白い。

 

天狗は海棲生物?

山の神とされる天狗が、海棲生物の化石と結び付けられて描かれているケースも紹介されていて、これも非常に面白かったです。

江戸時代に描かれた「天狗の爪石」の絵が、完全にメガロドンの歯だったりとか、平賀源内が描いた天狗の髑髏の絵がどう見てもイルカの頭骨だったりとか。

 

※参考までに埼玉県立自然の博物館に展示されているメガロドンの歯(左)と、京都大学総合博物館の企画展『海』で展示されていたイルカの頭骨(右)。写真左奥のイシイルカの頭骨が、平賀源内が描いた天狗の髑髏に一番似てるかな。

ヌエはレッサーパンダ?

色んな動物のキメラとして描かれる鵺(ヌエ)ですが、源平盛衰記の記述では「頭がサル、胴体がトラ、四肢がタヌキ、尾がキツネ」のような生き物とされているとか。

サルのように立体視できる平らな顔で、四肢がちょっと太めでもふもふの尾を持つ動物と言えばレッサーパンダ、ということで鵺の正体はレッサーパンダだったんだよ! ナンダッテー!? という仮説が紹介されていました。化石種では、現生のレッサーパンダよりはるかに大型の種も見つかっているんだとか。

あと、実際に現生の動物の骨を組み合わせて「鵺の化石の産状」を再現した悪ふざけ的な展示もあって笑えました。

その他にも、いろいろと伝承と古生物学を融合させたユニークな説が、標本と共に沢山紹介されていて、非常に面白い展示でした。ガチの古生物・化石ファンじゃない人にも、気軽に楽しめて良いと思います。

公式情報

公式サイト
http://www.museum.osaka-u.ac.jp/
住所
〒560-0043
大阪府豊中市待兼山町1-20
TEL
06-6850-6284

アクセス

阪急宝塚線「石橋」駅下車、徒歩10分程度。

大阪方面から石橋駅へは、阪急梅田駅から宝塚線で15分。
神戸方面から石橋駅は、阪急三宮から神戸本線で梅田方面へ向かい、十三で下車(25分程度)。宝塚線に乗り換えて15分程度。

その他

標本の写真撮影は不可。

コインロッカーあり。

食事は館内1Fに、カフェがあり軽食が取れる。

石橋駅から阪大までの間にも色々と飲食店あり。

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